PyCon JP 2025 座長の日報

チケットシステムとの付き合い方

2024年12月02日

PyCon JP 2025 座長 @nishimotz が個人として公開する日報の第2回です。

YouTube 動画 「桜井政博のゲーム作るには」には、ITエンジニアにはおなじみの仕事術も登場します。

例えば チケットでタスク管理 です。

桜井さんの言葉を借りると、チケットとは、ツールでサーバー上に管理されているデジタルデータであり、作業を「見える化」し、やるべきことを明快にするものです。

また、ソフトウェア開発においては、作業の記録、議論の記録、ファイルの更新履歴などとも紐付けられます。

オープンソースソフトウェアのプロジェクトでは、非同期やリモートで作業するチームのコミュニケーション手段のひとつでもあります。

PyCon JP では主に Jira というツールが使われています。

公開されている運営マニュアルには旧バージョンと新バージョンがあり、それぞれ、Jira の使い方を説明しています。

これらは、過去の PyCon JP の運営に合わせて、あるいは、過去の主催メンバーの経験から書かれ、更新されています。

過去の記事では「主催メンバー」ではなく「スタッフ」という言葉が使われていることもあります。

また、2025 では、主催メンバーのチーム編成について、過去と同じようにするとは限りません。

私はいま、チケットシステムに限りませんが、これらの情報を、PyCon JP 2025 の主催メンバーの活動に、どう当てはめていくか、考えたり、伝えたりする方法を考えています。

関わり方の多様性

「カンファレンス直前や当日になんらかの形で関れる」ということは、最初から「主催メンバーに求めたいこと」に含めるべきでしょう。

それ以外は、主催メンバーの活動は、基本的に、各自がそれぞれ自分の都合のいい時間・場所で行います。そう書かれています。今回もそう書くつもりです。

主催メンバーの皆様は、仕事として、対価を受け取ってなにかを請け負うのではなく、ご自身の時間や労力を提供して、カンファレンスを一緒に作っていきたいと、自発的に協力をしてくださるのだから。

一方で、人とモノとお金が動く「カンファレンス運営」においては、「担当者の都合のいい時間・場所」に合わせられない仕事も発生します。

この矛盾は、いままでうまく整理できていなかった、と私は感じてきました。

私が考える答えは、「関わり方の多様性」です。

まず(たとえ座長であっても)主催メンバーには、やむを得ず動けない期間や状況がありえる、という前提を共有したいです。

これから約10ヶ月、例えば

ということについては、皆様から事前に教えていただいて、それを尊重します。

私を含めて、あるレベルで責任を果たしたいと思う人が、この活動にフォーカスして、例えば1週間に数時間はこの活動のための時間を確保する、などは、それぞれの主催メンバーが「自分で選ぶこと」です。

私には私の生活と仕事がある

私もそうですが、主催メンバーの皆様も、それぞれに生活や仕事があります。

もっと言えば、私には私のタスク管理ツールがあります。日常的に自分のタスク管理ツールと PyCon JP のチケットシステムの、両立ができるだろうか。

ナレッジベースには「自分の担当の課題を1日1回確認」と書かれているのですが、私が(すくなくとも座長でない立場で)それ実践できたかなあ、と思うと、ちょっと難しいです。

私は、現在、私のタスク管理ツールの「繰り返しタスク」として、「PyCon JP のチケットシステムの確認と対応」というタスクを登録しています。

私の場合は、いまの時点で「毎週」という頻度ですが、いずれ「毎日」という頻度になるかも知れません。

この頻度や、このために使える時間が、例えば「主催メンバーのひとりひとりがどのくらい関われるか」の違いだと思います。

座長やリーダーの役割

その多様性を尊重しながら、どなたになにをお任せできるか、考えていくことは、座長やチームリーダーの仕事になるでしょう。

これは簡単なことではありません。

チケットシステムだけでは把握できないことも含めて、私は座長として、全チームの全仕事を見守る必要があります。 そのために、座長チームのような組織を持ち、主催メンバーの状況と、目的の達成状況を把握したいと考えています。

また、主催メンバーのモチベーションのためにできることをやりたいと思っています。 例えば、個人が抱える負担が大きくなっていないかを見守り、タスクの偏りを解消したり、必要な支援を行ったりすることです。

具体的にどのような取り組みができるのか、主催メンバーの皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

モヤモヤする期限

課題をチケットとして登録するときには、たいてい、期限を設定します。実際に重要な期限がある場合は、それを守る必要があります。

一方で、期限が明確でないタスクでも、ルール上、なんらかの期限を入力しなければならない、という運用をすることもあります。 これは単に一覧表示を整理したり、未完了タスクを抽出したりするための形式的な要件です。

しかし、この要件に従うことで、意味のない期限が設定され、本当に重要な期限を持つタスクが見えにくくなることもあります。

さらに悩ましいのが、期限切れになったときの再設定の問題です。 形式的に設定した期限が過ぎると、また新しい期限を入れなければなりません。 この作業を繰り返すうちに、そもそもなぜその期限を設定したのか、タスクの本質的な重要性は何なのかが、どんどん見えなくなっていきます。

私たちの仕事を支援するはずのツールが、逆に私たちの行動を縛っているという状況は、何か別の問題を示唆しているのかもしれません。 形式的な期限の設定と再設定を繰り返さなければならない背景には、なにか、より根本的な課題があるのではないでしょうか。

ツールは人のためにある

極端な話、チケットシステムを憎んだり、チケットシステムが怖くなったことって、ないですか?

これらの感情は、まさにツールが人を支配してしまっている状態を表しています。本来あるべき姿とは逆転してしまっているのです。

まして、仕事ではなく、コミュニティ活動にボランティアとして参加して、そういう気持ちが起きるとしたら、私の望む姿とは逆になってしまうのです。

これらは、私がカンファレンスに限らず過去に経験したことを踏まえた懸念ですが、座長として、こういうことを防ぎたいと考えています。

チケットシステムはあくまでもツールであり、私たちの活動を支援するためのものです。

ツールに振り回されるのではなく、私たちがツールを使いこなす。

この当たり前のようで実現の難しい理想に向けて、PyCon JP 2025 主催メンバーは、最初が肝心と考えています。

PyCon JP の運営マニュアルでは、チケットには「なにをするか」に加えて「目的やゴール」を書くようにと言っています。こうした言語化をもっと深掘りして、丁寧に行うことも大事です。

今回、主催メンバー募集を開始して、しばらくの間は、

「主催メンバーはツールをどのように使い、どのように活動をしていくか」

を話し合いたいと考えています。

多くの人に早くご参加いただけると、それだけ、多くの人に共感していただける運営ができるはずです。

そして、スケジュールやタスクが決まり、グループ(チーム)にわかれて活動が進んでいくときに、主催メンバーが感じている不安や負担について、対話の機会を設けたいと考えています。

主催メンバーが「やらなければならない」というネガティブな気持ちにならずに、結果的にみんなで大きなことを実現する、そんな活動にしていきたいです。

一人一人が無理なく、自然に、そして何より「人間らしく」活動に参加できる環境を、皆さんと一緒に作っていきたいと思います。

技術カンファレンスを作り上げる過程そのものが、私たちにとって価値のある経験となるように。そんな思いを込めて、この改善に取り組んでいきます。

Beyond Ticket Deadlines: A Human-Centric Approach to Conference Organization

This blog post by the Chair of PyCon JP 2025 discusses the challenges and philosophies of managing volunteer-based conference organization through ticket systems. Key points include:

Diversity of Involvement

Personal Task Management

Leadership Challenges

Deadline Management Issues

Human-Centric Philosophy

The post emphasizes creating a supportive environment where volunteers can contribute meaningfully while maintaining work-life balance and avoiding the common pitfalls of formal project management systems.