弱虫ペダルから学ぶチームワーク:誰かが動けないとき、支え合うこと
この記事は note.com 100日チャレンジ のミラーです。
西本です。私は2025年に広島で開催される PyCon JP 2025 の座長をしています。
今日は、「弱虫ペダル」というアニメから、チームで活動することについて考えたことを書きたいと思います。この作品は、私が広島に戻ってきてアニメを見るようになった、ひとつのきっかけとなった作品です。
ちなみに私自身は、クロスバイクで転んで手の指を骨折して以来、自転車にはほとんど乗らないようにしています。それでも、この作品に描かれるチームワークの姿は、私たちの活動に多くの示唆を与えてくれます。
弱虫ペダルとは
「弱虫ペダル」は高校の自転車競技部を舞台にしたスポーツアニメです。主人公の小野田坂道は、もともとアニメや秋葉原が大好きなオタク少年でした。しかし、ひょんなことから自転車競技の才能を見出され、総北高校自転車競技部に入部することになります。
この作品の魅力は、個性豊かなチームメンバーたちです。総北高校自転車競技部には、それぞれ異なる強みを持つメンバーがいます。
- スプリント(短距離での爆発的な速さ)が得意な選手
- クライマー(山岳での登りが得意)な選手
- オールラウンダー(総合的にバランスの取れた)選手
そして主人公の坂道は、驚異的なケイデンス(ペダルの回転数)を武器にするクライマーとして成長していきます。
チームスポーツとしての自転車競技
自転車のロードレースは、一見すると個人競技のように見えますが、実はチーム戦略が非常に重要なスポーツです。「弱虫ペダル」では、この点が丁寧に描かれています。
風よけになって仲間を引っ張る「牽引」、エースを勝たせるために自分を犠牲にする「アシスト」など、チーム全体で勝利を目指します。そして重要なのは、どんなに強い選手でも、必ず限界が来るということです。
誰にでも「動けないとき」がある
これは、PyCon JP の運営にも通じる話だと思います。
主催メンバーは、それぞれ本業を持ちながらボランティアで活動しています。家族の事情、仕事の繁忙期、体調不良など、様々な理由で「今は動けない」という時期が必ず訪れます。
「弱虫ペダル」でも、エースが調子を崩したり、アクシデントで遅れたりする場面があります。そんなとき、チームメンバーは互いにカバーし合い、全員でゴールを目指します。誰かが100%の力を出せないとき、他のメンバーがその分を補う。これがチームの本質です。
座長としての覚悟
PyCon JP 2025 の座長として、私は「支え合うチーム」を作りたいと考えています。
誰かが動けないときは、遠慮なく「今は難しい」と言える環境。そして、そんなときは他のメンバーが自然とカバーする文化。これは甘えでも依存でもなく、長期的に持続可能な活動をするための知恵です。
「弱虫ペダル」の総北高校自転車競技部のように、それぞれの強みを活かしながら、弱っているときは支え合う。そんなチームでPyCon JP 2025を成功させたいと思います。
実際、過去のPyCon JPでも、多くの場面でこうした支え合いがありました。それが、10年以上続くカンファレンスの底力なのだと思います。
私のマネジメントのお手本
私のマネジメントのお手本は、2年目のインターハイでの手嶋さんです。
手嶋純太は、いわゆる「天才」ではありません。しかし、チームのことを誰よりも考え、メンバーそれぞれの強みと弱みを理解し、適切な判断を下していく姿勢は、まさに理想のリーダーシップです。
派手さはないけれど、確実にチームを前に進める。時には厳しい決断も下すけれど、それはチーム全体のことを考えてのこと。そして何より、自分自身も必死に走り続ける。
座長として、私も手嶋さんのようなマネジメントを目指したいと思います。天才的な技術力や圧倒的なカリスマがなくても、チームのことを第一に考え、みんなで前に進んでいく。それが、持続可能なコミュニティ運営の秘訣だと信じています。
座長チームという「オールラウンダー」
今年の体制は昨年からの引き継ぎですが、「座長チーム」は私が新しく作りました。このチームは、いわばオールラウンダーのような存在です。今まさに、経験者が足りなくて苦戦しているチームを救うために動いています。
自転車競技で言えば、状況に応じてスプリンターにもクライマーにもなれる選手。どこでも必要とされる場所に駆けつけ、チーム全体のバランスを保つ役割です。
予期せぬ「落車」と復活
私たちの活動でも、まさに「落車」のようなことが起きます。
- 頼りにしたいと思った人が、突然の体調不良で活動できなくなる
- 家庭の事情で一時的に離脱する
- 仕事が急に忙しくなって参加できなくなる
これらは、レース中の落車やアクシデントそのものです。しかし面白いことに、集団の外に落ちていったと思った人が、突然、先頭集団に戻ってきて、ひょうひょうとエースをアシストしてくれたりすることもあります。一度離れたからこそ見えた視点で、新しいアイデアを持ち込んでくれることもあります。
集団走行とエンジニアのキャリア
「弱虫ペダル」の集団走行は、エンジニアのキャリアにおける様々な状態にも例えられると思います。
- 先頭集団:招待講演や基調講演をするような人たち。最新技術をリードし、コミュニティに新しい風を吹き込む存在。
- 集団(プロトン):プロポーザルを出して、採択されたり、されなかったりする人たち。技術の主流に触れ続け、学び続けている層。
- 集団から落ちる:技術の変化についていけなくなったり、他の優先事項で一時的に離れる時期。
集団から落ちてしまった人も、ちょっと頑張って「集団」に戻れば、いつかやってくるチャンスを掴めます。
あなたはLLMを触っていますか?FastAPIはどうですか?フリースレッドは気になりますか?これらの質問に「はい」と答えられるなら、あなたは集団の中にいます。実は「集団」に居続けると、意外に「疲れない」んです。それが習慣になり、自然とスキルを維持できるから。定期的に技術記事を読み、小さなコードを書き、新しいツールを試す。これが「集団走行」です。
一方、集団から離れてしまうと、戻るのに大きなエネルギーが必要になります。技術の進歩は速く、1年離れただけでも追いつくのは大変です。だからこそ、無理のない範囲で「集団」に居続けることが大切なのです。
重要なのは、これらの状態は固定的ではないということです。集団で休んでいた人が突然先頭に出ることもあれば、先頭を走っていた人が集団に戻って休むこともある。そして、一度落ちた人でも、また戻ってこられる。
PyCon JPのようなコミュニティ活動の素晴らしさは、この「戻ってこられる」環境があることだと思います。カンファレンスに参加するだけでも、集団に戻るきっかけになります。
勝ち負けではない、技術コミュニティの活性化
世の中には「必勝」のように見える、成功している技術カンファレンスの運営チームがきっとあるのだと思います。しかし、私は他の組織のことを気にしないで運営したいと考えています。
これは勝ち負けではありません。むしろ、いろいろなカンファレンスが切磋琢磨して、結局は技術コミュニティ全体を活性化する。この地域の技術者を応援する。そういった目標であって欲しいと思っています。
自転車レースでも、ライバルチームとの競争があるからこそ、全体のレベルが上がります。しかし、最終的にはスポーツ全体の発展につながる。技術カンファレンスも同じです。
そして私は、多様性がもたらす意外性が、閉塞感を打ち破ってくれることを、常に信じています。PyCon JP 2025 では、広島という地域性も活かしながら、独自の価値を提供したい。他のカンファレンスの真似ではなく、私たちらしいやり方で、技術コミュニティに貢献したいと思います。
PyCon JP 2025 について
PyCon JP 2025 は2025年9月26日(金)から27日(土)にかけて、広島国際会議場で開催されます。
主催メンバーについては、あまり大々的には募集していませんが、興味がある方のご相談は歓迎します。「動けないときがあっても大丈夫」なチームで活動しています。
更新履歴
- 2025-08-15: 初稿作成