PyCon JP 2025 座長の日報 ホームに戻る

座長は仕事を可視化して、メンバーにはぎ取ってもらうのが仕事

2025年06月25日

これは PyCon JP 2025 座長 (@nishimotz) の個人的な日報です。

仕事の可視化と委譲の重要性

座長として日々感じているのは、自分の役割は「仕事を作ること」ではなく「仕事を見えるようにすること」だということです。そして、見えるようになった仕事を、適切なメンバーに「はぎ取って」もらうことが、組織運営の核心だと考えています。

なぜ「はぎ取る」という表現を使うのか

「委譲する」「お願いする」という言葉ではなく、あえて「はぎ取る」という表現を使うのには理由があります。従来の組織運営では、リーダーが仕事を抱え込み、部下に「やってもらう」という上下関係が前提となりがちです。

しかし、PyCon JP 2025のような volunteer-driven な組織では、メンバーが主体的に「この仕事は自分がやりたい」「これは自分の得意分野だ」と感じて、積極的に仕事を取りに来てもらうことが理想的です。

仕事の可視化の具体的な方法

1. タスクの分解と明文化

大きな仕事を小さな具体的なタスクに分解し、以下の要素を明確にします:

2. 透明性の確保

すべてのタスクを公開し、進捗状況を共有します。これにより:

3. 参入障壁の低減

新しいメンバーでも取り組みやすいよう:

実際の運用例

PyCon JP 2025 の組織運営では、以下のような形で実践しています:

チーム別タスク文書の作成

各チーム(座長、プログラム、広報、スポンサー、会場、参加者管理)のタスクを詳細に文書化し、公開しています。これにより、メンバーは自分の興味や能力に応じてタスクを選択できます。

Working Out Loud の実践

進行中の作業を積極的に共有し、他のメンバーが参加しやすい環境を作っています。「こんなことを考えています」「ここで困っています」という情報を公開することで、協力者が現れやすくなります。

意思決定の透明化

Type 1(不可逆的)とType 2(可逆的)の意思決定を区別し、Type 2 の決定はメンバーに委ねることで、主体性を促進しています。

メンバーに「はぎ取って」もらうための工夫

1. 魅力的な仕事の提示

単なる作業ではなく、学びや成長につながる機会として仕事を提示します:

2. 適切なサポート体制

仕事を引き受けたメンバーが成功できるよう:

3. 成果の認知と感謝

メンバーの貢献を適切に評価し、公開の場で感謝を表明します。これにより、他のメンバーも参加したいと思えるような好循環を生み出しています。

座長としての学び

この「可視化→はぎ取り」のプロセスを通じて、座長としても多くを学んでいます:

「自分でやった方が早い」という誘惑との戦い

座長として最も難しいのは、「自分がやった方が早くても我慢する」ことです。経験や知識があるからこそ、つい自分で全部やってしまいたくなります。しかし、それではスケールしません。

他の人が手を動かすことで:

短期的には効率が下がっても、長期的には組織全体の力が向上し、より良い成果につながります。

AIエージェントとの協業との類似性

興味深いことに、この「仕事の可視化と委譲」の原理は、AIエージェントとの協業においても同様に適用されます。人間がすべてをコントロールしようとせず、AIに適切にタスクを委譲することで:

PyCon JP 2025の組織運営でも、AIツールを活用しながら、人間とAIの適切な役割分担を模索しています。

今後の課題

現在も改善を続けている点:

現在の状況:空気を暖め続ける

6月末、私たちは困難を抱えつつも、チームが私の仕事をはぎ取ろうとする状況にこぎ着けました。私は言葉を控えて、行動を控えて、ただただ大きな気球がふわりと浮かび上がることを願いながら、空気を暖め続けています。

座長としての役割は、指示を出すことでも、すべてを管理することでもありません。チームメンバーが主体的に動き出すための「空気を暖める」ことなのだと、この6月末の経験を通じて改めて実感しています。

メンバーたちが自ら仕事を見つけ、積極的に取り組もうとする姿勢が生まれてきたとき、座長は一歩下がって、その動きを支える存在になります。それこそが、持続可能で創造的な組織運営の本質なのかもしれません。

PyCon JP 2025 について

PyCon JP 2025 は、2025年9月26日(金)・27日(土)に広島国際会議場で開催される Python カンファレンスです。テーマは “pieces of python, coming together” です。

現在、主催メンバーを募集しています。プログラム、広報、スポンサー、会場、参加者管理など、様々な分野でご協力いただける方をお待ちしています。経験は問いません。一緒に素晴らしいカンファレンスを作り上げましょう。

主催メンバーへの参加をご希望の方は、こちらのフォームからお申し込みください。

更新履歴