過剰と思えるくらいのコミュニケーションを
PyCon JP 2025 座長 @nishimotz が個人として公開する日報です。
PyCon JP 2025 は9月26日・27日に広島国際会議場で開催されます。
主催メンバーを募集しています。主催メンバー申し込みフォームからご応募ください。
Working Out Loud(WOL)という考え方
「Working Out Loud」(声に出して仕事をする)というコンセプトをご存知でしょうか。これは、自分が何をしているのか、何を考えているのかを積極的に共有する働き方のことです。
特に非同期・リモートでの共同作業が増えた現代では、このアプローチが非常に重要になってきています。今日は、PyCon JP 2025の運営を通して感じている「過剰と思えるくらいのコミュニケーション」の価値について考えてみたいと思います。
非同期・リモートの共同作業の課題
非同期でリモートの環境では、以下のような課題が生じがちです:
- チームメンバー間での認識の齟齬
- 作業の進捗が見えにくい
- 孤独感を感じやすい
- 誰が何をしているのか把握しづらい
これらの課題に対して、「過剰と思えるくらいのコミュニケーション」がちょうどよい解決策となることがあります。
「過剰なコミュニケーション」がちょうどいい理由
例えば、AAA-123 のような Jira チケットのコードを入力すると Slack のボットが反応するシステムがあるとしましょう。「これからこのチケットの作業をするぞ」というシンプルな宣言をすることで、チームメンバーとのやりとりがスムーズになる可能性があります。
このような「ちょっとした一言」が持つ価値は:
- 透明性の向上: 誰がどの作業に取り組んでいるのかが明確になる
- 重複作業の防止: 同じ作業を複数人が始めてしまうリスクを減らせる
- 助け合いの促進: 同様の経験を持つメンバーがサポートを申し出る機会となる
- 帰属意識の強化: 「私たちはチームとして取り組んでいる」という意識が生まれる
一見「言わなくても良いのでは?」と思える情報でも、共有することで得られるメリットは大きいのです。
Slackの効果的な活用
Slackには様々な使い方があります:
- 人を指定してメンションする: 特定の人の注意を引きたい場合
- グループを指定してメンションする: 特定のチームに関係する情報を共有する場合
- メンションせずに書く: 誰かの即時の対応は不要だが、情報として残しておきたい場合
そして読み手側は、自分の都合で通知を調整できます。これにより、「必要な人に、必要なタイミングで、必要な情報が届く」環境が整います。
WOLの観点からは、メンションなしの投稿も非常に価値があります。すぐに返信が必要でなくても、「今こういうことをしている」という情報が共有されることで、チーム全体の認識が合わせやすくなります。
Jiraの役割と活用場面
一方、Jiraは以下のような場面で特に有用です:
- やったことをエビデンスとして残したい場合: 決定事項や完了した作業を記録として残せる
- 担当が頻繁に変わり、明確にしたい場合: 誰がボールを持っているのかを管理できる
- 複雑なタスクの依存関係を管理したい場合: タスク間の関係性を視覚化できる
過去の記事にも書きましたが、私は座長として期日管理よりも、お互いに納得できて、モチベーションを維持できることを大切にしてきました。しかし、イベント開催が近づくにつれ、期日がクリティカルな作業も増えていきます。
このバランスを取るためにも、Slackでの日常的なコミュニケーションとJiraでの記録の両方が重要になってくるのです。
Googleドライブ/ドキュメントの活用
情報を共有するもう一つの重要な場所がGoogleドライブとGoogleドキュメントです。個人のアカウントでこれらを使用すると、作成したドキュメントの所有権が個人に帰属しがちで、組織が一貫した方針で情報を管理しづらくなります。
幸いなことに、PyCon JPは組織として共有ドライブを運用しています。Googleドキュメントは最近、マークダウンでのデータのやりとり、タブ機能など、便利な機能が増えました。リアルタイムでの共同編集や、レビュー機能も非常に有用です。
オンラインミーティングや、チームごとの話し合いのメモを取ったり、アイディアを膨らませたりするのに、積極的に活用していただきたいと思います。また、議事録の残らない打ち合わせは基本的に避けるようにしましょう。
情報の透明性と継続性を確保するためにも、共有ドライブの活用は「Working Out Loud」の重要な一部となります。
座長の言葉の重み
各チームがこの座長の日報を読み返して、座長の思いを踏まえた活動を進めていることを嬉しく思います。座長自身が、チャットやミーティングで、質問や相談に答えるときに、これまでここに書いたことと食い違ったり、矛盾したりすることは、簡単には言ってはいけない、と自分を戒めています。
私は今、もう自転車のハンドルを握っているのではなく、急ハンドルや急ブレーキがきかない、巨大な船、あるいは大きな宇宙船の操縦をしていることを心に刻んでいます。発言一つ一つが大きな影響を持つことを意識し、一貫性を保つことの重要性を感じています。
PyCon JP 2025の現状と今後
ハイブリッド開催の全体ミーティングの2回目も終わり、いよいよ対外的に大きなローンチがこれから続いていきます。気を引き締めていきましょう。
また、6月には会場下見を兼ねた合宿が予定されており、多くの人と一緒に活動できることを楽しみにしています。オンラインでのコミュニケーションも大切ですが、対面での交流もチーム結束に重要な役割を果たします。
おわりに
「Working Out Loud」の実践は、単なるコミュニケーション量の増加ではなく、質の向上も意味します。適切なツールを使い、適切なタイミングで、適切な情報を共有することで、チーム全体の認識が揃い、協力がスムーズになります。
PyCon JP 2025のスローガン “pieces of python, coming together” のように、一人一人の小さな声が集まって、大きな力となります。みなさんと一緒に前に進んでいきましょう。
更新履歴
- 2025-05-10: 初版公開